実地指導のポイント 〜火災訓練〜
障害福祉サービス事業者の防災訓練の義務
2019年は台風15号・台風19号により千葉県・長野県・埼玉県を始めとした多くの自治体に甚大な被害が巻き起こりました。
特に埼玉県川越市では被害に遭った社会福祉法人が2法人もあります。2020年2月現在も避難生活を続けております。
この災害により障害福祉サービス事業者の防災に対する意識が変わり始めていることも事実としてあります。
今回からは障害福祉サービス事業者の義務として防災訓練・訓練の実施において指摘される実地指導のポイントに関する記事を作成致しました。
訓練の対象となる災害
・火災
・地震
・水害
・風害
・土砂災害
今回は火災に関する訓練についての記事です。
火災の予防の義務は消防法に規定
障害福祉サービス事業者の火災予防に関しては消防法関係法令には以下のように規定されています。
消防法第8条
1 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに準ずるものとして政令で定める大規模な小売店舗を含む。以下同じ。)、複合用途防火対象物(防火対象物で政令で定める2以上の用途に供されるものをいう。以下同じ。)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
2 前項の権原を有する者は、同項の規定により防火管理者を定めたときは、遅滞なくその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
3 消防長又は消防署長は、第1項の防火管理者が定められていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により防火管理者を定めるべきことを命ずることができる。
4 消防長又は消防署長は、第1項の規定により同項の防火対象物について同項の防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務が法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、当該業務が当該法令の規定又は消防計画に従つて行われるように必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
5 第5条第3項及び第4項の規定は、前2項の規定による命令について準用する。
消防法第5条
3 消防長又は消防署長は、第1項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
4 前項の標識は、第1項の規定による命令に係る防火対象物又は当該防火対象物のある場所に設置することができる。この場合においては、同項の規定による命令に係る防火対象物又は当該防火対象物のある場所の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
消防法施行令 1条-2
3 法第8条第1項の政令で定める防火対象物は、次に掲げる防火対象物とする。
一 別表第1に掲げる防火対象物(同表(16-3)項及び(18)項から(20)項までに掲げるものを除く。次条において同じ。)のうち、次に掲げるもの
イ 別表第1(6)項ロ、(16)項イ及び(16-2)項に掲げる防火対象物(同表(16)項イ及び(16-2)項に掲げる防火対象物にあつては、同表(6)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものに限る。)で、当該防火対象物に出入し、勤務し、又は居住する者の数(以下「収容人員」という。)が10人以上のもの
ロ 別表第1(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項イ、ハ及びニ、(9)項イ、(16)項イ並びに(16-2)項に掲げる防火対象物(同表(16)項イ及び(16-2)項に掲げる防火対象物にあつては、同表(6)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものを除く。)で、収容人員が30人以上のもの
別表第1(6)
ロ 次に掲げる防火対象物
(1)~(4) 略
(5) 障害者支援施設(障害支援区分が避難が困難な状態を示すものとして総務省令で定める区分に該当する者(以下「避難が困難な障害者等」という)を主として入所させるものに限る。)又は短期入所若しくは共同生活援助を行う施設(避難が困難な障害者等を主として入所させるものに限る。ハ(5)において「短期入所等施設」という。)
※避難が困難な障害者とは障害支援区分4以上の者
ハ 次に掲げる防火対象物
(1)~(4) 略
(5)身体障害者福祉センター、障害者支援施設(ロ(5)に掲げるものを除く。)、地域活動支援センター、福祉ホーム又は生活介護、短期入所、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援若しくは共同生活援助を行う施設(短期入所等施設を除く。)
消防法施行令 第3条の2
1 防火管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防火対象物についての防火管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。
2 防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。
3 防火管理者は、防火管理上必要な業務を行うときは、必要に応じて当該防火対象物の管理について権原を有する者の指示を求め、誠実にその職務を遂行しなければならない。
4 防火管理者は、消防の用に供する設備、消防用水若しくは消火活動上必要な施設の点検及び整備又は火気の使用若しくは取扱いに関する監督を行うときは、火元責任者その他の防火管理の業務に従事する者に対し、必要な指示を与えなければならない。
消防法施行規則 第3条
1 防火管理者は、令第3条の2第1項の規定により、防火対象物の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況に応じ、次の各号に掲げる区分に従い、おおむね次の各号に掲げる事項について、当該防火対象物の管理について権原を有する者の指示を受けて防火管理に係る消防計画を作成し、別記様式第1号の2の届出書によりその旨を所轄消防長(消防本部を置かない市町村においては、市町村長。以下同じ。)又は消防署長に届け出なければならない。防火管理に係る消防計画を変更するときも、同様とする。
一 令第1条の2第3項第1号に掲げる防火対象物及び同項第2号に掲げる防火対象物(仮使用認定を受けたもの又はその部分に限る。)
イ 自衛消防の組織に関すること。
ロ 防火対象物についての火災予防上の自主検査に関すること。
ハ 消防用設備等又は法第17条第3項に規定する特殊消防用設備等(以下「特殊消防用設備等」という。)の点検及び整備に関すること。
ニ 避難通路、避難口、安全区画、防煙区画その他の避難施設の維持管理及びその案内に関すること。
ホ 防火壁、内装その他の防火上の構造の維持管理に関すること。
ヘ 定員の遵守その他収容人員の適正化に関すること。
ト 防火管理上必要な教育に関すること。
チ 消火、通報及び避難の訓練その他防火管理上必要な訓練の定期的な実施に関すること。
リ 火災、地震その他の災害が発生した場合における消火活動、通報連絡及び避難誘導に関すること。
ヌ 防火管理についての消防機関との連絡に関すること。
ル 増築、改築、移転、修繕又は模様替えの工事中の防火対象物における防火管理者又はその補助者の立会いその他火気の使用又は取扱いの監督に関すること。
ヲ イからルまでに掲げるもののほか、防火対象物における防火管理に関し必要な事項
二 略
2 防火管理上必要な業務の一部が当該防火対象物の関係者(所有者、管理者又は占有者をいう。以下同じ。)及び関係者に雇用されている者(当該防火対象物で勤務している者に限る。第4条第1項第2号、第28条の3第4項第2号ハ及び第29条第2号において同じ。)以外の者に委託されている防火対象物にあつては、当該防火対象物の防火管理者は、前項の消防計画に、当該防火管理上必要な業務(法第17条の3の3の規定による消防用設備等又は特殊消防用設備等についての点検を除く。以下この項において同じ。)の受託者の氏名及び住所(法人にあつては、名称及び主たる事務所の所在地。第4条第1項第2号において同じ。)並びに当該受託者の行う防火管理上必要な業務の範囲及び方法を定めなければならない。
3 その管理について権原が分かれている防火対象物にあつては、当該防火対象物の防火管理者は、第1項の消防計画に、当該防火対象物の当該権原の範囲を定めなければならない。
4~9 略
10 令別表第1(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(16)項イ又は(16-2)項に掲げる防火対象物の防火管理者は、令第3条の2第2項の消火訓練及び避難訓練を年2回以上実施しなければならない。
11 前項の防火管理者は、同項の消火訓練及び避難訓練を実施する場合には、あらかじめ、その旨を消防機関に通報しなければならない。
提供している障害福祉サービスによって訓練の内容が変わる
防火管理者を定める障害福祉サービス事業者は年に2回以上火災に基づく消火訓練・避難訓練を実施する義務があります。
その中でも日中活動サービスである生活介護、就労継続支援といった障害福祉サービスは昼間を想定している場合で足りますが、共同生活援助や短期入所といった夜間サービスを提供している場合は、夜間に火災が発生した場合の混乱を予想し、夜間体制を想定した避難訓練の実施も重要なポイントとなります。
実地指導で指摘されやすいポイント
・年2回以上訓練を実施していない。
・訓練実施後の職員の反省点等の記録を残しておらず、全職員に周知していない。
・(グループホーム・ショートステイを提供している場合)夜間想定の避難訓練を実施していない。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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